なーご先生のカウンセリング室
製作予定 もしくは完成しない理由
第3回診察 AMT エンタープライズD
(注 本コーナーは第1回診察〜の連続物です----一応) 看護士 : 「次の方 どーぞ。」 腰痛 (以後 腰): 「(弱弱しく)-------お世話に----なります------」 な〜ご先生(以後 な) : 「どうですか 腰痛さん。」 腰 : 「---相変わらず、事件前後の記憶が無くて----(とイスに腰を下ろす)」 な : 「まあまあ、事故前後の記憶って、戻りづらいものなんです。気長に治療していきましょうね。」 腰 : (深刻な顔で)「------本当に記憶戻るんでしょうか------それ以前に」 な : 「!」 腰 : 「先生っ!!、スリッパと一緒に、この病院の裏に倒れていたなんて、事件当時、いったい私に何があったんでしょう?」 な : 「!!あわわわ--------あっ、そうだっ(わざとらしく)! そろそろお茶にしようと思ってたのよ。 腰痛さん いつもの水ようかん食べます?」 腰 : 「(嬉しそうに)あっ いただきますー。」 な : 「腰痛さんて、 ほんっと 水ようかん好きよねー。」 腰 : 「(水ようかんのパックを開けながら)甘いものに、目が無いんですよー。かみさんからは、 "おっきなアリンコ" て呼ばれてます。」 な : 「甘党のレベルがなんとなく解ったわ-----糖尿病にならないように――――って食べるのに夢中で話聞いてないし------」 腰 : 「はぐはぐ」 な : 「で、今日は 何を持ってきたの?」 腰 : 「(水ようかんを食べながら)これでふ」 な : 「なによ これは------- カレー皿------?」 腰 : 「失敬ですねっ!。 これは9年前に買った AMTのUSSエンタープライズDです。 (水ようかんを食べながら)スターウォーズと人気を二分する スタートレックシリーズ中の「ネクスト ジェネレーション」に出てくる人気宇宙船です。」 な : 「ほほう−。」 腰 : 「沈着冷静なピカード艦長が指揮するエンタープライズ号の5代目です。大昔にはじまったTVシリーズなのに、 (水ようかんを食べながら)いまだに作られているという、アメリカの「釣りバカ日誌」か「水戸黄門」のような怪物プログラムなんです。」 な : 「やっぱり“トレッキー” だったか-----------。」 腰 : 「(水ようかんを食べ終えて)名エピソードそろいの大作ですよ。特に、第125話「超時空惑星カターン」は名作中の名作で、すっごい泣けるんです。」 な : 「某ロボットアニメみたいなタイトルねー-----え、でも泣けるの? どんな話?」(と身を乗り出す) 腰 : 「航行中のエンタープライズDが、未知の探査機に遭遇し、ピカード艦長が気絶するんです。」 な : 「ふんふん。」 腰 : 「で、ピカード艦長は、唐突、見知らぬ惑星で意識を取り戻し、理由も分からぬまま、別人として生きることになるんです。」 な : 「それで?」 腰 : 「しかも、エンタープライズDは、探しても影も形もない----」 な : 「それから。」 (とさらに身を乗り出す) 腰 : 「そして、そのままその惑星で静かに老後を過ごし、」 な : 「-----------?」 腰 : 「ラストに大どんでん返しがあって、エンディングにピカード艦長がエンタープライズDの艦長室で思い出の笛を静かに奏でるんです。」 な : 「-----????」 腰 : 「私は、不覚にも、感動で大泣きしていくまいました。 」(思い出し涙) な : 「------あらすじが大雑把すぎて、感動のツボどころか、どんな話かさえ分からないじゃないのっ!」 腰 : 「“エンタープライズD”という唯一の帰る場所を失い、別人として生きなければならないピカード艦長と、大切な記憶を失い、不安とともに生きる私」 な : 「-----------(冷汗)」 腰 : 「ああっピカード艦長っ!!今私はあなたの苦しみが 痛いほどよくわかりますーっ!! (再び涙ぐむ)」 な : 「!」 腰 : 「ああっ、わたしの記憶は何処に!! あのスリッパはいったい何なの〜!!」 な : 「!!(手に持った湯のみを落とす) よ、腰痛さん! み、み、水ようかん もう1つ食べます?」 」 腰 : 「すいませんねー いただきます-。」(受け取り、さっそく食べ始める) な : (話題を逸らすように模型を手に取り)「しかし、随分あっさりしたプラモデルねー。すぐ完成しそうじゃない 。」 腰 : 「あまい。」 な : 「そうなのよ、この水ようかん ちょっと甘すぎて----」 腰 : 「この模型への認識がです。 表面をよっく見てください。」 な : (顔を近づけて)「な、なによ このミミズ腫みたいな線は。」 腰 : 「パネルラインなんです、メカものの命である筋彫りが、凸モールドで、おまけに 太くてへろへろなんです。宇宙船の形はいいのに----- 」 な : 「べつに 気にするほどじゃないじゃない。」 腰 : 「何を言ってるんですか! (水ようかんを食べながら)このパネルラインだけは、絶対に許せません!! ! (水ようかんを食べながら)というわけで、表面のモールドをサンドペーパーで削り落とし、全部凹モールドに彫り直すことにしたんです。」 な : 「どうせ、挫折したんでしょ?」 腰 : 「!(手から、水ようかんを落とす) ------彫っても、彫っても終わらないんです----。それに、何を考えたかケガキ針じゃなくてPカッターで筋彫りしちゃったんです−!!」 な : 「また、マニアックな話を---」 腰 : 「おまけに、彫り続けていると、段々上達してきて、今度は、最初に彫ったスジが気に入らなくなってくるんですー」 な : 「ふんふん」 腰 : 「ああっ、写経のように、スジ彫りをしつつ、昔のスジ彫りを悔やみ続ける----------どうひて、こんな精神的苦痛を味わわなきゃいけないんでしょうか?」 な : 「腰痛さんが 勝手にやってることでしょ。」 腰 : 「さらに難物なのが、縦長丸の宇宙船の窓なんです。こんな変な形の窓が無数にあるので、窓をくりぬいて光らせるのが大変そうで-----。キットの肉厚も凄いんです。」 な : 「そうまでして 窓光らせたって 意味無いでしょ-。」 腰 : 「何言ってるんですか!、暗闇で、多数の窓や、エンジン部のクリアパーツが美しく光る様を想像してみてください。 正に夢の国のクリスマスツリーが家にやってきたみたいじゃないですか。」 な : 「今回は クリスマスツリーが家に来たか-------。」 腰 : 「このクリスマスツリーのようなキットがリビングにあれば、世界に唯一、“1年中クリスマス”の場所が誕生するんですよっ! 」 な : 「腰痛さん 知ってる? 品川にクリスマス用品を1年中売っている"1年中クリスマス"なお店があること。」 腰 : 「--------------------------------------------」 な : 「あれ? なに 泣きそうな顔してるの、感動しちゃった?」 腰 : 「夢を砕かれて、悲しんでるんです------------(涙)」 な : 「腰痛さん、気分を変えて早速治療を始めましょうよ。」 腰 : 「やっと カウンセリング室らしくなってきましたね−。」 な : 「まずは、トラウマになってる筋彫りの克服が良いと思うの。」 腰 : 「先生 治療の方向が脱線してません-----?」 な : 「というわけで、今日は ここからここまで 筋彫り終わるまで 帰っちゃだめー。」(意地悪な笑い) 腰 : 「先生− そんな筋彫り用の工具なんて用意して-----って キットの箱の中に、当時のPカッターがそのまま入ってるー。しかも、無くしたと思ってた“トライマスター社”ステンレス製テンプレート曲線用のセットまで入ってる〜。」 な : 「何年開けてなかったの、このプラモデル-----」 腰 : 「うう―――― 筋彫り、めんどくさいなー」 な : 「さて、じゃあ私は、作業の邪魔しちゃ悪いから、パソコンのメールチェックでもしよっと♪」 腰 : 「ああっ 筋彫りの太さが 不均一だー!」 な : 「あ、○△ちゃんからメール来てる♪」 腰 : 「ひいいっ!!線がズレた――(汗)」 な : 「へ〜 □○ちゃん 今度 マンション買うんだー(微笑)。」 腰 : 「が〜、指が、指がつる〜〜」 な : 「ふ〜ん ◇▲さんも 色々たいへんね〜。」 腰 : 「せんせ〜〜」 な : 「なによ!!(怒)」 腰 : 「昔より、さらに更に筋彫りが下手になってます〜。」 な : 「知りませんっっ!! 頑張らないと、今日は一人で泊まりになるわよ!!」 腰 : 「う゛〜〜夜の病院はお化けが出るからやだよ〜 でも〜筋彫り 飽きたよ〜」 な : 「しかし、最近“スパム”が増えたわね 一寸ほっとくと沢山----困ったわ――――!」(突然笛の音が聞こえだす。びっくりして顔を上げる) 腰 : 「♪〜♪〜」(寂しそうにリコーダー(小学校の笛)を吹いている) な : 「腰痛さんっ!! 笛を吹いたって、このコーナーは“スタートレックの話”みたいには終わりませんっ!! だいだいどっから出したのその笛っ!!」 腰 : 「せんせ〜 この治療、私の記憶喪失とは関係無いですよ〜」 な : 「!」 腰 : 「記憶喪失とスリッパの関係を解明しましょうよー ああっ!あのスリッパはいったいっ!!」 な : 「!!! よ、腰痛さん み、水ようかん もう一つ食べます?」 腰 : 「――――――ふっ ふふふふふ-----(含笑))」 な : 「な、なによ急に変な笑い方して。」 腰 : 「な〜ご先生、実は私、結構意地の悪い男なんです----。」 な : 「え、な、なんのこと―――。」 腰 : 「本当は、かなり以前から気づいていたんです。」 な : 「――――――――――」 腰 : 「先生の反応が面白かったので、つい調子に乗ってしまいました。お詫びいたします(含笑)。」 な : 「―――――(冷汗ドキドキドキ)」 腰 : 「では、結論を申し上げましょう。」(と椅子から立ち上がり、先生に背を向けて、ブラインドの降りた窓に歩いていく) な : 「―――――(ドキドキドキドキドキドキドキドキドキ)」 腰 : 「先生は、私が“記憶喪失”と“スリッパ”の話をすると“水ようかん”を振る舞ってしまう。」 な : 「!―――――(背筋がサーッと寒くなる)」 腰 : 「――――――――――」 な : 「――――――――――――――――――」 腰 : 「――――――――――――――――――――――――――」 ――――――長い沈黙―――――――― な : 「―――――――――? って それだけ?」 腰 : 「はい。」(先生に背を向けたまま) な : 「え?」 腰 : (先生に背を向けたまま)「つまり、私は、食べたいときに、水ようかんをご馳走になれるというわけです わーっはははははははは(高笑)----」 な : 「!!」 腰 : (先生に背を向けたまま)「 ん?この高笑い 何かを思いだせそう-----」 腰 : 「もう一度 わーっはははははははは(高笑)-----って ああっ 思い出したっ!! 前回の“ファルコン号”の時 後ろから何かで殴られて、」 腰 : 「(ブラインドの隙間から外の景色を見て)あああっ!私が倒れてた現場って、ここじゃんっ!! ----ってことは 先生っスリッパで私を!!(と振り向く)」 腰 : 「---―――――-- あれ?先生−っ?何処いっちゃったんですか−?」 看護士 :(開けっ放しのドアから顔を出し)「患者さんの2回目の高笑いの直後、もの凄いスピードで 走って何処かへ行っちゃいましたよ。」 腰 : 「――――――逃げた――――――?」 つづく 注)な〜ご先生は”な〜ごの部屋”担当 ”な〜ごさん”とは別人です。 な〜ご先生のカウンセリング室(待合室) に戻る